恋*クル
「……悦子と別れてくれてありがとう」
ざわつく教室前の廊下で、彼女は最初にそう言った。
「……“ありがとう”?」
腹が立った。
悦子のことを俺はまだ好きで、心のどこかでやり直したいと願っていたから。
なんで“ありがとう”なんて礼を言われないといけないんだ?
「悦子さ、クラスでもハブられていたんだよね。金森くんの彼女ってだけで」
「え……っ? クラスでも?」
俺と悦子はクラスが違ったから、初めて聞く話にひどく驚いた。
「毎日のように、“金森くんの彼女はあんただけじゃない”とか、聞こえよがしに言われたりして」