恋*クル
「……やり直したら? あたしは武人には絶対に堕ちないから」
「唐揚には堕ちたのに?」
「……あれは……、しかたないよ。本当に美味しかったから」
「ふうん……」
武人はそれきり、口を開かなかった。
長く続く沈黙が息苦しくなって。
あたしは「じゃあね」と、一方的に別れを告げて、武人の前から立ち去った。
靴箱にいる武人に背を向けて歩き出しながらも、心のどこかで期待していた。
追いかけてくるんじゃないかって。
昼休みに、武人がお弁当をあたしに届けに来るときのように。
ゆっくりと、カウントダウンを始める。
だけど……
“ゼロ”と、呟いても、武人はあたしを追いかけて来なかった。
.