恋*クル
「あーっ、せいせいしたっ! あんたもそうでしょ? 悦子さんとやり直すってことは、ヘタレ男を演じなくてもいいってことじゃん」
「まぁ……、確かにそうだな。俺は梓ちゃんのためだけにヘタレ男を演じていたわけだから?」
「………」
信一くんいわく“男のなかの男”なコイツが、ヘタレ男を演じるなんて……。
しかもそれは、モテることを自覚しているコイツの、あたしへの気遣いであって……。
どれだけ大変だったんだろう。
それに、あたしはそこまでされるほど価値のある女じゃない。
「ま、そういうことで。最後の弁当くらい、ガッツリ食べろよ」
「……分かったわよ」
……なによ。
こんなに、あっさりと終わらせないでよ。