恋*クル


口に入れた瞬間、あの独特の甘さが口いっぱいに広がる。



「……うっ……」

「もうっ! ほら、吐き出したら?」



さくらでんぶの甘ったるさが気持ち悪くて吐きそうになる。

それでもあたしは、涙目になりながら、ごくりと飲み込んだ。


最後だから、ひとつ残らず、全部食べたかった。

武人があたしに贈った、最後のハート。

何の意味があったのか、それとも意味もなく、ただの気まぐれだったのか。

それは武人にしか分からない。


ただ、ハートの大きさと同じように。

武人の心の隅に、あたしの存在がまだ小さく残っているんだと信じたくて。

素直になれなかったくせに、それを突き返したくなくて。

あたしは自分のなかに閉じ込めることにしたんだ。



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