恋*クル
なんの……鍵?
手を差し出している武人を前に、悦子さんはスカートのポケットを探り始めた。
「はい」
スッと差し出された鍵を、武人は無言で受け取った。
その形からして、それはたぶん、家の鍵だ……。
「ねぇ。やっぱり、荷物持ってきた方が良かったかも」
「大丈夫だって。親が帰ってくるの、夜遅いから。学校終わってからでも大丈夫だよ」
「でも、心配……。予定変更とかないよね?」
「気になるんなら取って来いよ」
「……うん……、そうする。鍵。もう一回貸して?」
呆然としているあたしの前で交わされる会話。
悦子さんは武人から鍵を受け取り、あたしに軽く頭を下げると、大急ぎでその場を立ち去った。