恋*クル


「……へぇ……。お泊りってわけ?」



会話の内容から推測した出来事を、あたしは武人に突きつける。



「……あぁ。俺の親、旅行に行ってんだよ。一週間、パリに。で、今日帰って来るんだ」

「なによ、悦子さん、一週間も泊まりに来てたわけ?」



突っかかるようにして訊いたあたしに、武人は眉間に皺を寄せ、嫌悪感たっぷりに答えた。



「……悪いかよ。ヨリ戻したんだから別にいいだろ?」

「………っ……」



全身の力が抜けて、思わずカバンを落としそうになった。


武人が悦子さんとヨリを戻すことは、予想していた。

悦子さんからの“やり直したい”という内容の、あの淡いピンク色の封筒を見た時から。


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