恋*クル
「ごめんっ! すぐ戻るから待ってて!!」
悦子さんのところに行って、あたし、どうする気なんだろう?
よく分からないのに、足が勝手に、悦子さんのもとへと向かっている。
ヘタすれば武人と鉢合わせするかもしれないのに。
鉢合わせしちゃったらどうするんだ? あたし……。
頭と体が別々の思考を抱えているのに……
「悦子さんっ!」
あたしは正門に着くと、勢いのままに彼女の名を呼んだ。
「あ……、えぇと……梓ちゃん……だったよね?」
悦子さんはあたしのことを覚えていてくれて、しかも人懐こい笑顔で“梓ちゃん”と呼んでくれた。