恋*クル


「……もしかして……、武人を待っているの?」

「うん。鍵を返そうと思って……。ほら、あたし、今日の朝、同じバスに乗れなかったから」



今朝、鍵を取りに行った悦子さんは、あたしたちと同じバスには間に合わなかった。



“いいの? 待っていてあげたら?”

到着したバスに乗り込む武人に、あたしがそう訊くと……


“いいよ、待たなくて”

武人が返した言葉。


冷たいようにも聞こえたけれど、裏を返せば、二人の繋がりを感じた。

武人が悦子さんを置いて先に行っても、彼女はそれを責めない。

いちいち言葉にしなくても、通じ合える仲……。


ほんの少し、あたしが嫉妬してしまったのは事実だ。


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