恋*クル
「――悦子が?」
「う、うん……」
「そっか。ありがとう」
教室に向かう途中の階段で、偶然出くわした武人。
あたしから鍵を受け取った武人は、悦子さんと同じようにとても淡々としていた。
「今から追いかければ、悦子さんに追いつくかもよ?」
のんびりとした足取りで靴箱に向かう武人に、あたしは焦って言う。
「え? 別にいいよ。追いかけなくても……」
「なんで? 一緒に帰ればいいのに」
「別に……子供じゃないんだし。一人で帰れるよ」
「だからっ、そういう問題じゃなくて! なんでそう、冷めているわけよっ?」
「……冷めてなんかねぇしっっ!」
あたしの言葉にカチンときたのか、武人がイラついたように怒鳴った。