恋*クル
とりあえず、武人の隣に腰を下ろし、お弁当箱を開ける。
そこには、海苔で巻かれただけの大きなおにぎりが一個だけ入っていたんだ。
「……ずいぶんと質素なお弁当だこと」
チクリと嫌味を言いながらおにぎりを手に持つ。
武人はあたしの嫌味に反応すらせずに、淡々と話し始めた。
「――俺さ、悦子とヨリを戻しただろ?」
「……うん……」
「やっぱり俺は、悦子を忘れられなかったんだよ」
避けては通ることのできない、現実――
あたしは、手に持ったままのおにぎりを落としそうになってしまった。