恋*クル


たじろぐ様子もなく、武人は冷静に、そしてさらりと言う。


……じゅうぶんに、嫌がらせだと思うんですけど!



「大嫌いって言ったでしょっ!? あたし、ぜーったいに食べないから!」



あたしはおにぎりを手早くお弁当箱に戻し、ハンカチに包むこともせず武人に突き返した。



「もういい? あたし、麗たちを待たせているから帰る! あんたの言いたいことはよく分かったから」



スッと立ち上がり、あたしは麗たちの元に行こうと踵を返す。



「―――っ!?」



前に一歩、足を踏み出そうとした瞬間。

武人があたしを、後ろから抱きしめる。


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