恋*クル


「うっ、ううん。そんなことないよ」



無理をして笑った悦子は、そのあとも豚肉を口に運び、なんとか完食してくれたけど。

豚肉が嫌いだということは、その食べ方からすぐに分かった。

酢豚を口にしたあと、悦子は何度も白ご飯を口に入れる。

まるで、豚肉を押し込むようにして。



そんな悦子を見て、ふと思った。

もしもこれが梓だったら……。



“豚肉は嫌いなんだよっ!”



あいつ、怒り狂って、豚肉なんか絶対に食わないんだろうな……。



「どうしたの? 武人?」

「いや、なんでもない」



フッと笑う俺を見て、悦子はきょとんとした顔で首を傾げた。



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