恋*クル


「――ちょっと気持ちが他に揺れてしまったけど、今も、これからもずっと、梓のことをちゃんと好きだから。……俺の彼女になってください」



紳士的な態度で、ぺこりと頭を下げる武人。

あたしは少し間を置いてから、言う。



「……いいわよ。彼氏にしてあげても」



あたしってば。

普通こういう時はさ、嬉しくて泣きながら返事するもんでしょ?

上から目線でしか返事できないなんて。


こんな性格の自分に、ほとほと嫌気がさすけれど。

武人はそうでもないみたいで。

あたしの返事を聞いて顔を上げた武人は、ヘタレのときと同じ、ヘラヘラした顔をして喜んでいる。


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