恋*クル


ボソボソと呟くようにして言うと、あたしは歩く速度を速めた。



「なにっ? 分からないって」

「ちょっと梓! あんた何か隠してないっ?」

「……もうっ! あいつの話はやめてよーっ」



武人が、あたしにかまう理由……。

あたしはちゃんと分かっているし、しかも、それを言ってきたのは、武人だった。




そう……。

いま思い出しただけでも、本気で泣けてくる。


あれは、新学期の翌日の放課後。

場所は、生徒全員が帰ったあとの、あたしの教室……。



* * * *


< 27 / 201 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop