恋*クル


“あの手紙って……、武人!?”

“うん”


思わずあたし、チッと舌打ち。


予想外だった武人の登場に、あたしは自分の机の上に置いていたカバンを肩に下げ、帰る態勢に入った。



“帰る!”

“えっ? ちょっと梓ちゃん! 俺、話が……”

“別に聞きたくないし”



あたしのなかで、武人は詐欺師そのもの。

カッコイイ顔して、スラリした手足を持っていて。

そのくせ中身は、カメムシごときでオタオタするヘタレだなんて。


いったい、女を何人だましてきたわけよ?

あたしみたいに、がっかりした女の数は、きっとハンパじゃないと思う。


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