恋*クル
“じゃあね~”
愛想笑いひとつせず、あたしは手をひらひらと振りながら武人の前を横切った。
“……っと待てよ!”
……は?
初めて聞く武人の男らしい声に、あたし、思わず止まる。
と言うか、あたしの腕を武人が強引に掴んだもんだから、止められたと言ったほうが正しいのかもしれない。
武人は、くるりと、あたしを無理やり自分の方に向きなおさせた。
“もうっ! 何すん……”
もちろんあたしは、そんな武人に反抗して、手を振り払うつもりでいたのに。
少しイラついたように、眉間に皺を寄せている武人の表情……
ドキドキしてしまって、身体が硬直してしまったんだ。