恋*クル
「……今、ヘタレって言いました?」
「え? うん、言ったよ? 武人のことだけど?」
「アニキがヘタレ? なに言ってるんですか?」
まるで、あたしがボケたことでも言ったかのように、信一くんは鼻で笑う。
「思いっきりヘタレでしょ。カナブンとか毛虫見ただけで泣き喚くし」
「いや、確かにアニキは虫嫌いだけど……」
「それにさ、あたしがちょっとでも不機嫌な態度取ったら、すぐ謝ってくるし」
「はぁぁ? そんなわけないでしょ! あのアニキが!」
ヘタレを慕っている弟分は、あたしの言い分なんてまるで信用していない。
へぇぇ、そうか。なるほど。
あのヘタレ。
弟分の前でだけは、ヘタレっぷりを隠してカッコつけてるわけね?