恋*クル
爽やかな笑顔で、“お姉さん”と呼ばれたオバサン。
口をあんぐり開け、目だけはキラキラと輝いている。
「俺も急いでいるんだ。でも、順番は守らないと……ね?」
「あっ……、あぁ……、そうね……」
なにっ。
なんなの、オバサンのこの豹変ぶりはっ!?
オバサンは素直に、バス待ちの最後尾へと向かっていく。
「ほら、お婆ちゃん。杖。大丈夫?」
「あらあら、すまないねぇ。ありがとう」
爽やかな笑顔を保ったまま、彼はお婆ちゃんが落としたままの杖を拾い、握らせる。