恋*クル
信一くんは、肩で大きく息をすると、少し間を置いてから話し出した。
「そんな中で、アニキのお父さんの仕事の都合で引っ越すことになって。悦子さんとはそれきりになってしまったんです」
「……悦子さんは、まだ武人のことを?」
「まだ好きですよ」
じゃあ武人は?
訊きかけたけれど、言葉にできなかった。
“梓ちゃんに一目惚れしたっていうか……”
初めて会った日の翌日。
そう告白されたことを思い出したから……。
毎日のように、“梓ちゃん、梓ちゃん”と、あたしに付きまとうヘタレ男を思い出したから……。