戦国サイダー
七帖 鉄紺
ただひたすら、窓の外に広がる海を見ていた。


前にいる鬼虎と、運転している兄の会話なんて全然耳に入ってこなくて。



それでもカーステレオから響いてくるジャズだけが、私の心に入ってくる。



きっと楽しめる、笑える! と思っていたドライブは。



ちっともテンションの上がらない、窮屈な密閉空間へと化していた。



一体どうしたんだ、私。




何度目かの溜め息をついた後、兄がバックミラー越しに笑ってきた。



「こーとーり。着いたんだけど?」


「えっ、うそっ」



ぼーっとしてたらいつの間にか到着していたらしい。


慌てる私に前席の二人が振り返る。


 
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