戦国サイダー
私が鬼虎の立場だったらどうなんだろう。


いつの間にか知らない時代にいて、何もかもわからない状態で。



そりゃ戻りたいよね、だって怖いし、家族と会いたいし。



でも、もしそこに……あいつがいたら……





……鬼虎が、いたら?




「ってぎゃーーっ!! 何を考えてるんだ私は!!」



突如叫んだ私に、すれ違う男の人がびくりと身体を大きく震わせた。


しまった、他に人がいたらしい、気づかなんだ。


幸いなのか、不幸なのかその同年代っぽい男性とは顔見知りではない、すみませんと小さく会釈しささっと通り過ぎる。



落ち着け、私!



もう余計なことは考えるのをやめようと、言い聞かせ我が家へと続く山道に入る。


舗装されていない道はすっかりぬかるみ、サンダルの私の足にさらなる不快感をもたらしてくれた。


それでもただ黙々と歩く……無心で……いや何気に小声で般若心経を唱えながら……



……あの変人父親のおかげで覚えてるのよ。


 
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