戦国サイダー
「違います!」


「向きになるところがまさしく、だな」


「なっ、それを言うなら」



あんただってさっき大人げなかったでしょうが! と言う前に顎を掴まれ、声が出なくなる。



「それと」



そんな私を見て、至極愉快そうな顔。



「儂はまだ嫁は取っておらん」



――え?



「お前を側女(そばめ)とも白拍子とも思っとらんしな」



心臓が、跳ね上がる。



だって、またその顔を近づけてくるから。



楽しそうに、妖しく、獲物を見つけたような瞳で。



逃げようと思っても、この手からは逃げられないことを知っている、いくら顔を動かそうとしても、しっかり掴まれ阻まれる。


 
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