戦国サイダー
「さて、帰るか」



それに比べて鬼虎は相も変わらず態度が変わらない。


すっと立ち上がって木陰から出た鬼虎をしゃがんだまま目で追うと、雨がもう止んでいることに気がついた。


蝉もまた、一斉に鳴き出している。



「帰る、って私まだ帰ってきていいって」


「世話をしろ、と最初に言った筈だ」



せっかく、優位に立てる気がしたのに。


この人は、人が言うこといちいち言い負かさないと気が済まないんじゃなかろうか。



ねえ、馬鹿兄貴。



本当にこれ『弟』だと思ってる?



「わかりましたよ! 帰ります!」



まだ通常業務に戻らない心臓を抱えたまま立ち上がると、鬼虎が溜め息をひとつついた。


 
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