戦国サイダー
そう思って柄杓を奪い取ると、鬼虎が心底呆れた顔で長い溜め息を吐いた。



「……儂の足を先に流そうと思っただけだ」



…………あ、さいですか。


ものすっごい恥をかいた気がするんだけど、気にしないようにしよう、うん。



顔を若干逸らしながら鬼虎に柄杓を返す、乾き出した泥は気持ちが悪かったけど、ここまで運んでくれたんだから、そこは譲る。



鬼虎は柄杓で水をそれぞれの足に一回ずつかけただけで、私の左隣に座った。


その手から柄杓を受け取り、私も脚へとかける。


小さな擦り傷がいくつか出来てたものの、それほど水で沁みることもなく、左手で泥をよくこすり落としながら、脚を洗い終えた。



このまま乾くまで待っとくのかな、だいぶ涼しくなったし特にすることもないからいいんだけど。


鍵は閉めてるから、結局玄関から入らなきゃならないんだよね。



後ろの窓を確認すればきちんと施錠はされている。


横を見れば鬼虎はぼんやり夕焼け空を見つめている。


 
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