戦国サイダー
「あ、いや、別に話したくなければいい……」


「知りたいから尋ねたのだろう」



この人は、いつも人の言葉を最後まで言わせずに喋り出す。


だから私は否定も出来ない、押し切られてしまう。


尤も、気になるから聞いたのは真実。



一瞬だけこちらに向けられた鬼虎の顔は、綺麗だった。


夕日に照らされ、目元に影が落ちて。



「儂はそれに気づき、防御の為に相手を組み伏せた。昨日のようにな」



黒い髪が、温い風になびいている。



「だが違うのはその時既に相手は死んでいたことだ。力の加減が出来なかったのか、焦ったのか……儂はその者の首を折っていた」



ああ。



「殺したのは、当時の儂と歳も変わらぬ娘だ」



それで昨日、あんなに取り乱して。


歳は少し違うけど、組み伏せたのは同じ女。


 
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