戦国サイダー
暫し、沈黙が流れる。


私は言葉が出てこなかったし、由惟さんは無理に喋ろうとはしなかった。


 
蚊取り線香の香りが、漂う。



「もしさ」



そんな中発せられた声は、闇夜に溶けていきそうだった。



「オレが狼だったら、どうする?」


「……えっと」



唐突な質問は、突拍子がないようで、ひどく現実的。


そしてその顔は、至って真面目。



「今好きな奴いねぇんだろ? 思李に気がないのは知ってっけど……オレは男だし?」



しまった、言葉が出ない。


確かにそう、そうなんだけど。



「今ここで押し倒すだけの力はあるわけで」



なんで最近、色んな事が身の回りでこんなに起こるんだ。


いくら夏だからとはいえ、私はちっとも浮ついたつもりはないのに。


それとも、何か悪いことしてる?


 
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