戦国サイダー
どんなに瞬きをしても、何度もその姿を見返しても。


そこに立っているのは寝ている筈の鬼虎で。



縁側の下で起き上がろうとした由惟さんの鼻の先に、その切っ先を向けている。


 
忘れていたわけではない、この人を。


まあもしかしたら起きてくるかもしれないとは思ってたけど。


そして由惟さんのことを知っているのもわかってたけど。



まさか日本刀を持ち出してくるとは思いませんでしたよ。


だってこの間兄とそれはこの家にいる間は使わない、って約束してなかったかしら? あれは気のせい?



「ん……え、思李?」


「黙れ」



動けなくなった由惟さんの言葉は、鬼虎の覇気というか鬼気迫った声に阻まれる。


動けなくなる気持ちもよくわかる、あれが目の間にあったら確かに怖い。


 
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