戦国サイダー
「……気にしないで。兄は酔うとこうだから」



ものの、やはり気の利いた言葉なんて出てくる筈もなく、正直に事実を述べるしかない。



「酔っぱらうとキス魔……じゃわかんないか、えーと、誰それ構わず接吻しちゃう癖があるだけだから。別にホ……男色家とかでもないし」



この人に通じる言葉を選んで説明する難しさをこんなことで知るなんて、ちょっと情けなくて気落ちしてしまう。



それにしても思いの外虎がウブでちょっと可愛らしい。


あんなこと平気でしてた男が、男にキスされただけでこんなにも慌てるなんて。



……って、あれ、日本って昔男色って別に珍しいことではなかったような。


んー? そうなると虎ももしかしたらそのケがあったりしたりしなかったり……?


あれ、そうなるとこれって逆に……



「……もしかして嬉しかったり、したり?」



自分の予想にびくびくしながら口に出してみると、物凄い勢いで虎が振り返って。



「そんなわけあるか!」



猛犬の如く噛みついてきた。


噛みつくってのは言葉のあやだけど、ほんと、そんな感じ。


 
< 267 / 495 >

この作品をシェア

pagetop