戦国サイダー
びっくりしたものの全否定の態度にほっと胸を撫で下ろす。


いくらなんでも、惚れた相手が男色家だったら忍びなさ過ぎる。



「ごめんごめん」とちょっと笑いながら言うと、赤い顔の虎が「馬鹿にするな」と牙を向く。


その瞳がちょっと潤んで、申し訳ないけどそれが妙な色気を演出していた。



「あんまり気にしないで。どうせ兄は明日になったら覚えてないから」



凹む虎に向かって他にかける言葉が浮かばない。


酔った勢いとはいえ、まあやっぱり暗黒記憶になるだろうし。



ちょっと同情心を覚える私に、いや私の場合は未遂だったけど、虎が眉をぐっと寄せた顔で「平気だ」と言ってきた。



……頑張りすぎです、継虎さん。



「あの、別に無理しなくても」


「しておらん」


「いやいや、普通あの状況は誰でも驚くと思いますし」


「誰でも? 儂を誰だと思っている」


 
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