戦国サイダー
それは嘘だけど、これ以上のさばらしておくのもいけない気がしたので。


きっと睨んでやると、兄はその視線に気づいたのか、小さく息を吐いた。


 
「酔ったらその勢いで行くかと思ったんだよ。ついでに焚きつけたらさ、素直になるか、と」


「相手の気持ちを無視して事を運ばないで下さい」


「無視って……え、思李さ」


「ちなみに素直になったのはお兄ちゃんです」



仕返ししてやりたい気分満々な私がそう言うと、兄ががばっと顔を上げた。


驚いたような、焦ってるような表情で私を窺ってくる。



「……まさか、だよね?」


「そのまさか、です」



この馬鹿兄貴は自分でも酔ったらどうなるかぐらいは知っている。


というか私が教えてあげた、親切で兄想いのこの私が。



「……怒ってた?」


「いや、寧ろあれは……困惑してた」



その瞬間兄は見事に崩れ落ちた。


まあ今までの酒の席で兄が男にキスしたことがあるかどうかまでは知らないが、兄にとっても充分ショックなのだろう。


 
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