戦国サイダー
「もうひとつは、ほとんど一緒の理由だな。勿論、お前が虎について行くのも反対だ。

それに……例えそれぞれの時代に生きようと、子どもを作ることも」



「さっきはあんなこと言ったけどな」とはにかむ兄の優しさが、痛過ぎるほど胸に沁み出した。


 
「お前がここで子どもを産んでも、その子は一生父親の姿を見ることがないかもしれない。虎は一生その子を抱けないかもしれない。

もし、子どもの誕生を見届けてから帰ったとしても、いつか親子が離れるときは来る」



そこまで、兄は考えていたのか。


私はそんなに深く考えていなかった。


別れることになったとき、自分が辛いから。



虎が帰ってしまうとき、好きでいればいる程悲しいだろうから。



だから、もうこれ以上は望まない、望みたくないとだけ思っていた。





ようやく零れた涙を見て、兄が優しく「ごめんな」と謝った。


謝る理由も、必要も、何もないのに。



俯いて必死に首を横に振ると、まるで子どもをあやすみたいに、頭を何度も撫でられる。


 
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