戦国サイダー
「俺が予想するに二人はなーんにも進展がない、と。加えて思李は現状維持を保とうとしてる。合ってる?」



展開の方向がよくわからないままに、私は素直に頷いてしまった。


それを確認して兄はにいっと笑う。


 
「そりゃね、俺はさっき言ったことはお前にもわかってもらいたいよ。というかお前が反するのなら、俺は全力で止める」



「大事な妹ですから」と面と向かって言われ、ちょっとだけドキッとしてしまった。


こんな兄に。



「だけど、一番阻止したいのは、思李が後悔すること」


「……後悔?」



聞き返す私に、兄はゆっくり大きく頷く。



「思李が、言わないと決めたのならそれで構わない。ただ言わなかったからといって、後から後悔して欲しくない。

逆もまた、ね。

言ってしまって、別れるのが辛くて苦しくて。言わなきゃ良かった、と思って欲しくない」



温い風が、涙の乾いた頬に触れてゆく。



「それって……難しい……」


「難しいよ。やり直しがきかないんだから。言わなかったら、多分もう二度と言えないんだ」


 
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