戦国サイダー
二度と。


その言葉が私の心に引っかかってゆく。



そう、虎が帰ってしまったらもう二度と言うどころか、会う機会さえないかもしれない。


 


「だから、必死に考えなさい」



考える――



「もう他に選択肢はない、だなんて決めつけずに」



私、考えてなかったのかな。


考えて、悩んでこの結果を選んだんじゃなかったのかな。



「こういう感情は、時間の問題じゃないと思うから。例え一時でも幸せかもしれない。でもその時間があったが故に、引きずるかもしれない。

どっちがいいかなんて、俺が決めることじゃないから。


俺は、ただお前に後悔して欲しくない、でも俺の気持ちはわかってもらいたい」



「……なんかそれ、すごいわがまま」


「わがまま言うな、こんなに優しい兄に向って」



そう言いながら兄が私の両頬をつねったので、お返しに私も兄の鼻を摘まんでやる。


 
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