戦国サイダー
お兄ちゃんは「気づいたら転がるだけ」と言った。


私はいつから転がり始めただろう。


その坂道の先に、ゴールはあるんだろうか。


もしや穴に落ちてしまうこともあるだろうか。



それなら、私は小さい葛籠を持って帰ろう、おむすびころりんのおじいさんのように。



「あんだけ応援されたら、頑張るしかないよね」



ひとり書斎で呟いてみる。


わざわざ口に出すあたり、私も相当往生際が悪いのかも。



明日虎は帰ってくる。


夏梅ねぇから出された猶予は三日間。


まあ、律儀に守る気はないですけど、守らなければ怒られますけど。



ただ虎に会う前に、私はひとつやっておきたいことがあった。



ずっと変わらない古びた椅子に腰を落とす。


パソコンの電源を入れ、キーボードを埋め尽くす紙類をそのまま床に移動させた。



神には誓わない。



だから、これからすることがたとえ神に逆らうことだとしても。



私は、後悔しない。


 
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