戦国サイダー
「……浴衣だ」
中に畳まれていたのは鮮やかなオレンジ色の浴衣。
取り出して広げてみる、柿色の地に同系色で八曜菊と曼珠沙華、さらに白で曼珠沙華が描かれていて、派手なようで大人っぽい。
浴衣を持っていないわけではない。
でも持っているのはどれも母譲りのちょっとモダンなやつだったり、紺地に朝顔の地味目のものだったり。
それに比べて、明るくて、華やかで。
「気に入ったか」
すこし呆然としていた私に少しだけ柔らかい声。
視線を移せば、寄りまくっていた眉根は離れ、ほんのちょっぴり嬉しそう。
そんな顔をされれば、笑顔で頷く以外に選択肢はない。
「でも……なんでいきなり?」
機嫌は悪くなさそうだったので素直に聞いてみる。
「ここではたん……誕生日とかいう生まれた日を祝うことがあるのだろう」
いつの間にか葛饅頭も綺麗に片づけていた虎が少し戸惑った様子を見せた。
考えてみれば数え年ってお正月にひとつ増えるのだから、誕生日だなんて習慣、戦国時代にはないのかも。
「何で知って……ってお兄ちゃんか」
「ああ、ダイがしつこいぐらいに申すのでな」
その言い草はなんだか不本意チックなんですけど。
そしてお兄ちゃん何を考えてるんだか、余計なことはしなくていいんですけど。
……いいんですけど、今は感謝しておこう。
中に畳まれていたのは鮮やかなオレンジ色の浴衣。
取り出して広げてみる、柿色の地に同系色で八曜菊と曼珠沙華、さらに白で曼珠沙華が描かれていて、派手なようで大人っぽい。
浴衣を持っていないわけではない。
でも持っているのはどれも母譲りのちょっとモダンなやつだったり、紺地に朝顔の地味目のものだったり。
それに比べて、明るくて、華やかで。
「気に入ったか」
すこし呆然としていた私に少しだけ柔らかい声。
視線を移せば、寄りまくっていた眉根は離れ、ほんのちょっぴり嬉しそう。
そんな顔をされれば、笑顔で頷く以外に選択肢はない。
「でも……なんでいきなり?」
機嫌は悪くなさそうだったので素直に聞いてみる。
「ここではたん……誕生日とかいう生まれた日を祝うことがあるのだろう」
いつの間にか葛饅頭も綺麗に片づけていた虎が少し戸惑った様子を見せた。
考えてみれば数え年ってお正月にひとつ増えるのだから、誕生日だなんて習慣、戦国時代にはないのかも。
「何で知って……ってお兄ちゃんか」
「ああ、ダイがしつこいぐらいに申すのでな」
その言い草はなんだか不本意チックなんですけど。
そしてお兄ちゃん何を考えてるんだか、余計なことはしなくていいんですけど。
……いいんですけど、今は感謝しておこう。