戦国サイダー
「何を泣いておる」


「へっ……あ、いや何でもないです!」



ゆっくりと起き上がった虎が、何故か丁寧に私の目の前に正座する。


つられて正座した私も相当馬鹿だ。


あれみたい、成績が悪くてお父さんに怒られるの図。


あ、いや、うちの父は「勉強なんか出来なくてもいい」と笑ってましたが。



茶の間から差し込む明かりで、余計に虎の眼光が鋭く見えるのだと思いたい。


ただ……その……お顔はとっても真面目なんですが……



「ちょっと……ごめん……これ取ろう……」



ちょっと腰を上げて腕を伸ばし、おでこの冷却シートを剥がす。


貼ったばかりとか、熱が、とかどうでもいい。



真面目な顔に、すんごい似合わない。


泣いてなかったら、爆笑してたわ。



爆笑こそはしないものの、涙交じりにちょっと笑ったら虎に怪訝な顔をされてしまった。


貼ってる姿なんて、想像も出来ないんだろう、しなくていいけど。


 
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