戦国サイダー
「泣きたいのなら、泣けば良いだろう」



上から降ってくる声は、相変わらず低音で素っ気ない。



でも多分、理由が言いたくないのならそれでいいから我慢するな、という意味が込められてそうで。


都合良く解釈し過ぎかな。



でも多分、傍から見たら体勢が中途半端過ぎて可笑しそうで。



なんだか嬉しさとか可笑しさとか、いっぺんに溢れて来て、笑いながら泣いてしまった。



その反応に、虎が溜め息を零したのがわかる。



「どっちかにしろ」



そう言われても、どうしようもないんだから仕方がない。


考えてみれば、こうされたことは一度もない気がする。


だけど無駄に心臓が跳ね上がったり、顔に血が上ったりはしない。



まだ少し熱っぽさの残る虎の胸が、心地良かった。


 
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