戦国サイダー
昨夜のうちにマニキュアもペディキュアも完璧。


浴衣だから化粧は薄めにしたけれど、髪の毛は花のコサージュ付のピンでまとめた。



鏡の中の私は、少しぐらいいつもと違って見えるだろうか。



帯の結び目を背中に回し、おはしょりの最終チェック。


外はもう夕暮れで、ヒグラシが鳴いていた。



「うん……浴衣は大丈夫」



まるで自分に言い聞かせるように呟いて、机の上の携帯電話を手に取る。



『大丈夫よ』



今日の昼間、夏梅ねぇからたったそれだけのメールが届いた。


余計なことを言わない優しさが、素直に嬉しい。


まあその反転、まだ私が何もしてないってばれてる辺りが怖いけれど。



それでも応援してくれることに感謝しながら、夏梅ねぇからもらった香水をひとふき、肘の内側にまとう。



シトラス系の淡い香りが、鼻をくすぐり、心に届く。


 
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