戦国サイダー
「あー……無駄に緊張するなよ、私」



頭をぶんぶん左右に振ってから、小さなかごバックを手にして、部屋を出た。



階段を降りようとする一足が、妙に重たい。


浴衣だから歩きにくいとかそういう問題ではなく。


きっと降りたくない気持ちがあるから。



夏祭りに行こう、って誘ったのは自分のくせに。


そりゃ虎は「別に構わんが、何をしにだ」とか言ってたけど。


「花火見たりとか?」って言っても花火を知らなかったけれど。


まあ結局行く理由は「何かが気になるから」だったんですけど!



それでも、一緒に行けるだけ……やっぱり嬉しいものでして。


何があろうがなかろうが、出来るだけ色々な思い出を作っておきたい、という打算的で切実な思いもあるわけでして。



なのに今階段を降りる気持ちはちょっとブルー。



いや、グレー?


 
< 359 / 495 >

この作品をシェア

pagetop