戦国サイダー
戸を静かに閉めて、廊下の奥へと兄を引っ張る。


ちょうどいいところに来た、兄に相談……してみていいのかな。



「まさかあんな男前がいたとはね、そりゃオレがいくらモデル友達紹介してやっても食いつかないわけだ」


「違う! そういう関係じゃないから!」


「紹介したオレの身にもなれよなぁ、あいつらいっつも泣いてオレに……」


「違うって言ってんでしょうが! このバカ!」



客間からだいぶ離れたけれども、考えてみれば鬼虎のことをどう言ったらいいのかに悩む。



両手に紙袋を持った兄は「照れなくていいのに」なんてふざけたこと言いながら、肩をすくめた。



悩む、けど悩んだって仕方がない気もする。


だってやましいことはない、どっかからか誘拐したわけでも拉致したわけでもない。


あいつが勝手に乗り込んできたようなものだ。



母譲りの二重をじーっと見つめてみる。


大学生の兄は常識人……でもあるし、というか両親がいない今、頼れる人はこの人しかいないわけで。


 
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