戦国サイダー
「ご、ごめんなさい」

「あぁ!?」



抱えられて若干身体がくの字に曲がったまま、謝ってみたものの、鬼虎は文字通り鬼と化しているご様子。



「申し訳、ありませんでした……ありがとう……ございます」



うん、これはやっぱり私が悪いんだろう、というか助けてもらった形になってしまった。


元はアナタが失礼なことを言ったからなんですけど。



「……恩人に怪我をさせるほど、儂は呆けておらん」


「ほんとすみま……え?」



いきなり不思議な単語を聞いた気がした、しかもぼそっと、低い声で。


思わず顔を上げて鬼虎を見ようとしたら、抱えられていた腕が急に離れる。



「つ、つぐと……」


「儂は先に行く。朝餉の支度が出来たとダイから言われておる。お前もさっさと着替えて来い」



足に力が入ってなくて、その場にぺたんと座りこんでしまう。


鬼虎は、そんな私に視線を向けることなく部屋を出て行ってしまった。


 
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