戦国サイダー
だって私は教科書の中でしか戦国時代を知らない。


如何にリアルな戦場の話をされようとも。


その時代の暮らしぶりを事細かに説明されようとも。


『なるほど! 確かにそうですね!』とは言えないんじゃないかな、と。



なんて立ち止まって考えているうちに四回目のくしゃみが出たわけで。


取り敢えずタオルケットをかけてやるか、と縁側へと足を進める。



近づいて見た寝顔は、そりゃあ綺麗だったけど。


なんだかちょっと可愛くない気もした。


気が抜けていないというか、寝てても無愛想というか。



寝てるときぐらい可愛い顔したらどうなのよ、と思いつつその引き締まった腹にタオルケットを掛けた。



途端――



私の世界が、ぐるっと回転した。



背中と後頭部に鈍い痛みが走ったけど、痛いという声すら出なかった。


目に入ってきたのは空と、鬼虎。


私の首にはその大きな手がしっかりあてがわれていて。


もう片方の手は、両腕を抑えつけていて。


 
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