嫌いな男 嫌いな女

ためらいがちに美咲の部屋の中に足を入れた。
靴は取り敢えず屋根に揃える。

思った以上に、女の子の部屋ってかんじだ。
ぬいぐるみが少し。雑貨がちらほらとあって、たまにすげえピンクとか赤とかのもんもある。やっぱり乙女趣味だなこいつは。

姉貴の部屋よりも女の子って感じで、落ち着かない。

俺の部屋とももちろん違う。散らかってねえし、なんか、甘ったるい匂いがするような気がする。


「じろじろ見ないでよ」

「みてねーよ」


相変わらず目を赤くして美咲が後ろから怒ったように恥ずかしそうに文句を言った。


「あ、これ、渚から」

「え? あ、ああありがとう……」


取り敢えず、先にこれだけは渡しとかねえと渚になに言われるか。
手にしていたものを美咲に渡して、窓にもたれかかる。

なんか、腰を下ろすのは……落ち着かないし。


「で? なにがあったんだ?」

「…………」


なんでまだ無言なんだよ。もういい加減話せよお前。

ここまでわざわざ、俺が来てやったんだ、これで話さなかったら俺はこの部屋ぐしゃぐしゃにして出て行くぞ。


「……今日、私、誕生日で」


知ってるよ。だから渚からのプレゼントを渡したんだ。
なんのために今日、美咲を呼んだと思ってるんだ。


「なに? だれからも祝われなくて泣いてたのか?」


だったらくだらなさすぎるんだけど。美咲ならやりかねないとすら思ってる。


「違うわよバカ」

「じゃあなんだよ」

「大輔くんに、誘われて」


大輔? だれだそれ。


「一緒に帰りにプレゼント買いに行くことになって」


だからだれだよその男は。
んで、ちまちまちまちま話すなよまどろっこしいな。
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