嫌いな男 嫌いな女

「帰りに、引き止められて……」


だーかーら!
スパッと話せよ!
だから女はめんどくさいんだ!

あと情報が足りねえからよくわかんねんだけど。だれだ大輔。


「キス……されそうになった」


……なんだそれ。


「キス? されそうになったって? されてないってことか?」

「わかんない」


わかんないってなんだそれ。したかしてないかくらいわかるだろ? 俺もしたことねえからよくわかんねーけど。唇になんか当たればわかるだろ。


「あたったような気もするし、違う気もするし……」

「……で、なんでそれで泣いてるんだよ」

「わかんない」


わかんないばっかりで、それが俺にわかるはずもねえだろうが。


「振り向いたら、すぐそばに顔があって、そのまま逃げてきたから覚えてない」


あほらしい。
マジであほらしい。
本気であほらしい。

なにを心配なんて似合わないことしたんだろう、俺は。
こんなくだらないことをなんで俺は聞いてるんだ。


「自業自得じゃねえか」


だっておかしいだろ?
なんでおれがそんなことを聞かされないといけないんだよ?
自分でそいつと遊びに行ったんだろ?

そういえば今日明宏がそんなこと言っていた気もするな。神谷とかなんとかと出かけたとか言ってたっけ。告白してきた男か。


「もてねえブスが調子乗ってほいほいついていくからそういうことになるなるんだよ」



どうにでもなれ。
口はもうとまんねえし、俺の気持ちももう止めらんねえ。

ばかみたいな話に付き合わされたイライラが募って仕方ねえ。
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