嫌いな男 嫌いな女
『高校生の巽』
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カトリック系の女子校の朝は早い。
朝のホームルームの代わりに礼拝があり、毎朝聖書を読むから、登校時間は他の学校よりも30分ほど早い8時20分だ。
学校までは家から電車で25分。乗り換えがないだけマシかな。
高校に入学した頃は、朝が早かったり満員電車に疲れたりはしたけれど、それが一年半以上も続けば日常だ。
女子校だからもちろん出会いは少ないけれど、女の子だけの生活は思った以上に楽しかった。
クラスみんなが仲よしだし、男の目がないからか、自由に過ごすことができる。
……巽と離れたくて決めたとはいえ、今では選んでよかったと心から思っている。制服だってかわいいし。友達もたくさんできた。
高校2年生の、秋。
ショートカットだった髪の毛は、肩くらいまで伸びて、最近はずっと同じ髪型だ。
身長はもう伸びないらしく、160手前で止まっている。
巽とは……高校に入ってから顔も見ていない。
同じ駅を利用しているはずなのに、一度も見かけたことはない。
朝は私のほうが早いし、帰りもあいつはクラブとバイトがあるとかで遅いからだろう。
由美子は今も同じクラスで、明宏くんとは今も付き合っている。そのせいで巽と接点はないのに情報は入ってくる。
今も明宏くんと一緒のバスケ部だってこと。
身長はもう170センチ以上あるとか。
高校に入ってより一層人気があるらしく、高校からはいろんな女の子と付き合っているとか。
付き合っては別れてを繰り返しているらしいから、今もバカには違いない。
楽しい毎日。
あいつがいないんだから、楽しくないはずがない。
「あー……彼氏ほしいー」
1年から同じクラスになって、一緒に過ごすようになった沙知絵(さちえ)が学校を出るなりそう言って背伸びをした。