嫌いな男 嫌いな女

でも、沙知絵が見たら、携帯番号を聞き出すんじゃないだろうか。
多分、もてるだろうなあ、この人。身長も結構高いし……話しやすい雰囲気だし。

制服は学ランだったけれど、胸元にちょっと特徴的な校章をつけていた。


このマークって、巽と同じ、高校のだ。


ってことはこの人、巽と同じ高校なんだ。何年の人だろう。
共学だったら余計もてるだろうなあ、この人。


「君、あの女子校だよね? その制服」

「あ、うん」

「あの学校ってすごい校則厳しいんだろ? お嬢様見たいな子ばっかりだと思ってたけど、君みたいな子もいるんだあ」


……どういう意味だろう。
いや、まあお嬢様ではないけれど。カトリック系だし、確かに校則は他の高校に比べたら厳しい方だから、そんなイメージがあるかもしれない。

でも結構みんな普通の、女の子だ。

そんな話をすれば、「楽しそうだね」とニコニコと話を聞いていた。

本当に、話しやすい人だなあ。人見知りのしない人なんだろう。たまたま出会った私に、いろんなことを聞いてきたり、話してきたりする。

なのに、ちっともイヤな気はしない。
どっちかというと、楽しいくらい。


十分ほど他愛ない話をしながら過ごしていると、男の子が「あ、ここで俺乗り換えなんだ」と慌てて降りていった。


「バイバイ」


明るい笑顔で手を振ってきて、私も釣られて手を振る。

……名前聞かれるかと思った。って自意識過剰かな。
ああ、でも、聞いてみてもよかったかな、私が。せめて学年とか。

同い年くらいの男の子と話すのって、久々だ。中学生まではみんな結構子供っぽかったのに。さっきの男のはすごく落ち着いて見えた。笑い方は子供みたいだったけど。

悠斗くんとは、また違った優しさを感じる男の子だったな……。

悠斗くんと、まあ、明宏くんも、他の男の子よりも落ち着いていたけど、他の男子なんて、みんな巽みたいな感じだったもん。
巽は一番ひどかったけど。

バカで、口が悪くて、すぐ調子にのって、偉そうにする男。


そんな男の子しか知らない。


そういえば明宏くんも、たまに見かけると、ちょっと落ち着いていて優しくなっているような雰囲気だったかも。

高校生になったら変わっていくものなのかなあ。
……私も、変わっていたりするのかな。女の子らしくなっていたり?


巽も……見ない間に、変わっていたりするのかな。
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