嫌いな男 嫌いな女
明宏に言わせると、俺はだれも好きになってないらしいけど、そんなもんわかんねーよ。かわいいなあとか、そういうのじゃダメなのかよ。
付き合うってめんどくせえ。
中学の頃は、高校生になればわかるのかなーって思ってたけど、ちっともわかんねえや。前よりわかんねえかもしれねえ。
今、目の前にいる美咲については、ほんっと、これっぽっちもわかんねえしな。
なんで泣いたのかも結局よくわかんねえし。
聞いても答えねえし、今は泣いていたのがウソみたいに過ごしてるし。
「なに?」
「……別に。お前も女子高生なんだなあって思って」
「気持ち悪っ! おっさんみたいなこと言わないでよ」
気持ち悪いってなんだよ。
ほんっと、口の悪さは変わんねえな。
髪の毛がちょっと伸びて、ほんのちょっとだけ、女っぽくはなったけど。
「だってお前があの女子校のかわいい制服着てんだろ? 想像できねえもん」
「……普通に着てるけど」
そういや、明宏も見たことあるって言ってたな。俺が似合うはずねえって言ったら、“そんなことないけど”って言ってたっけ。
……信じらんねえけど、大樹も美咲のことをかわいいって言ってたんだよなあ。
いや、マジで信じられねえ。
学校で大樹から『かわいい子と電車で会った』って言っていたときはどんな子かと思ったのに。まさか美咲とはなあ。
大樹もてんのにブス専なんじゃねえの? だから今までだれとも付き合ってなかったんじゃねえのかな。
「なんで巽今日、来たの?」
「あ? ああ、あいつらに遊ぼうって言われたら合コンだったんだよ。俺は行かねえって言ったのに」
「……ふーん」
ふーんってなんだよお前。
聞いてきたくせに興味ないような顔しやがって。