嫌いな男 嫌いな女
『自覚の恋心』
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月曜日になって学校に着くとすぐ、沙知絵が私に駆け寄ってきた。
「あの後巽くんとどこ行ったのー!?」
メールでも散々聞かれた。説明したのだけれど、やっぱり直接聞かなくちゃ納得しないんだろう。まっすぐで、素直な沙知絵らしい。
まあ、メールの返事を曖昧にしていた私も悪いし。
あのあと、巽のことを思い出したくなかったんだもん……。
あのときの、自分の気持ちも、思い出したくない。巽を思い出したらそのときの気の迷いまで思い出してしまって、考えたくなかった。
「ケンカして家に帰っただけだよー」
「嫌いとか言いながら実は、とかないわけ?」
「ない! それはない! マジでない!」
そんなことあるはずがない。ありえない。
……ちょっと、あれ? とか思っちゃったけど気のせいだ。久しぶりで自分の感情のコントロールが出来なかっただけ。ムカつく気持ちが久々すぎたから。
それだけだ!
もう今後一切関わりたくない。これ以上あいつに振り回されたくないもの!
自分がおかしくなってしまう気がして、怖い。
「ならいいけど……っていうか、大丈夫? どうしたのあの日」
突然泣いたことについて、気を使うように沙知絵が問いかける。
「ちょっと、体調悪くってさ。あと、目にゴミ。恥ずかしくなって逃げちゃってごめんね」
「……そう? いいんだけど……合コンって言ってなかったからさ、ごめんね」
「いいよ、全然! ほら、大樹くんの名前も分かったし!」
しゅんとする沙知絵に、慌てて元気なふりをしてみせる。
巽とのことを気にしていたのも事実だろうけれど、私のことを心配してくれていたのも、わかる。
私のほうが悪いことしちゃったのに。