嫌いな男 嫌いな女


明宏くんや、由美子や沙知絵が言うように、本当に私のことを気にしてくれてるのかなあ。あんないい人が、私のことをそんなふうに思ってくれているなんて、なんだか信じられない。

映画が好きで、ひとりでも見に行くんだと言って、今度おすすめの映画を貸してくれるって言った。

今まで付き合った人はふたりだけで、どっちも面倒くさいと言って振られたんだって話してくれた。思わず笑ってしまうと、困ったように、だけど豪快に笑っていた。



話せば話すほど、本当に、話しやすくて、楽しい。



なのに、なんでだろう。この気持ち。
すっきりしないというか……もやもやしてる。

好きだなあとか、いいなあって思うのに……恋って気分にならない。




いつの間にか、6人で遊びに行く日が決まり、気が重いまま過ごしていると当日になった。
……着替えて玄関で靴を履いたものの、脚が動かない。

やっぱり、断ればよかった。

会いたくない、というよりも、見たくない、っていう思いが日が経つにつれて膨れ上がっていく。

別にケンカしたっていい。むかつくけどそれでもいい。だけど……前みたいに、私の方を見ようともしなかったら……。


前あったときみたいに話せたらいい、かもしれない。
だけど、それもそれで、怖い気がしてしまう。

気づきたくない気持ちが、破裂してしまうかもしれない。


「ねーちゃんなにしてんの?」

「……なんでもないよ。行ってくる……」


背後から隆太の声が聞こえて、やっと脚を踏み出す。

秋の日差しが、憎たらしいくらいに晴れている。絶好の遊園地日和ってやつか。土砂降りだったらよかったのに……。晴れてるのになんか寒いし。まだ冬には早いっていうのに。

玄関をバタンと閉じて、また一歩、歩く。
こんなに気分が悪いなら、家で寝ててもいいのに、なんで私歩いているんだろう。イヤダイヤダって思いながらも、行こうとしている。

会いたい。会いたくない。
見たい、見たくない。

重い体が、私の思考回路をめちゃくちゃにかき乱す。
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