嫌いな男 嫌いな女
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「巽! 巽ー!! 起きなさい!」
「んー……」
おかんのうっるさい声が聞こえてきて、ベッドで寝返りをうった。
「いつまで寝てるの! 今日から学校でしょ!」
「……休む」
「バカ言ってんじゃないのよ! ほらさっさと準備しなさい!」
俺の布団を剥ぎとっておかんが朝から吠える。
なんでそんな元気なんだよ……。
「あー! そこあけんなよ!」
寝ぼけ眼で腰を上げると、おかんが俺の部屋のカーテンに手をかけていた。
「なにいってんの。開けないと暗いでしょ」
「いーんだよそこは。なんなら雨戸も閉めておきたい」
「あんた、まだ美咲ちゃんとケンカしてるの?」
ケンカって言葉はなんかしっくりこないけど。まあそんな感じ、と適当に返事をすると呆れられた。知るかそんなもん。
……美咲が引っ越してきて1週間。
初対面でケンカして、夜にもう一回ケンカして、あの日から俺は一度もこのカーテンを開けていない。もちろん窓だって。
幸い出かけても美咲に会うことはなかった。
できるならもう二度と会いたくないねあんな女!
でも、今日から学校だ。……あいつが今日から一緒の学校に通うっていうんだからもう憂鬱だあー。
頼むから同じクラスにはなりませんように!
「学校で会ったら仲よくすんのよ、巽」
リビングでパンをほおばる渚が俺をみるなりそう言った。
だれのことかは分かり切ってる。
聞こえなかったフリをして椅子に座って俺もパンを手にした。